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カテゴリ:遺言のお話

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不治の病で回復の見込みが無い時
延命治療を控えまたは中止してもらい
人間としての尊厳を保ちつつしを迎えることを
尊厳死といいます。

尊厳死を望む意思表示をすることを
尊厳死宣言といいます。

遺言の作成と同時に尊厳死宣言をされる方が増えています。

但し、遺言とは死後に効力を発するものですから
尊厳死宣言を、遺言書の中に入れるのには適当でありません。
別途の方法で宣言する必要があります。

尊厳死宣言を公正証書で行う場合には
通常、宣言書を作成して宣誓認証という手続きを取ります。
(1通が公証役場に保管されます)
これは、公証人が面前で本人の真意を確認して作るもので
非常に高い証明力をもつと言えます。
(公証人手数料11000円)

但し、尊厳死宣言があったとしても最終的に延命治療の中止は医師の裁量に
ゆだねられており、尊厳死宣言が受け入れられないこともあります。
日本尊厳死協会
のホームページによると宣言書による医師の尊厳死容認率は93%とあります。

尊厳死のご希望がある場合には、
遺言作成の機会に宣言書の作成も合わせて考えてみられてはいかがでしょうか?

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遺言があったが逆に揉めてしまうケース④

『自筆証書遺言』

遺言を作りたいという相談は、本当に年々増加しています。
ただすべてのおうちにガッチガチの公正証書遺言が必要かといいますと
私はもっと柔軟に考えてもよろしいかとは思います。
信託銀行や弁護士事務所へ相談されますと
まずは公正証書で遺言をという話になりますが、
揉める可能性が少ないのなら自筆証書遺言も十分に使えます。

ただ自筆証書遺言では、揉めてしまった場合に
すぐに訴訟に発展し親族関係はズタズタになってしまい
二度と修復不能となる悲しいケースも起こりえます。

例えば、自筆証書遺言には、「検認」という手続きが必要になります。
以下裁判所HPから引用
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 遺言書(公正証書による遺言を除く。)の保管者又はこれを発見した相続人は,遺言者の死亡を知った後,遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して,その「検認」を請求しなければなりません。また,封印のある遺言書は,家庭裁判所で相続人等の立会いの上開封しなければならないことになっています。
 検認とは,相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。
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相続人は通常この検認の際に初めて遺言内容を知ることになると思いますが、
その遺言内容が納得できないものであったり、
自分に不利な内容であるような場合には、
検認調書作成の際に
 「筆跡が被相続人のものと違う」
 「普段使っていた印鑑で無い」
という主張をして、遺言の有効性が問題になるケースがあります。

そうなりますと、自筆証書遺言の有効性について
裁判にて争うことに発展する場合があります。

また高齢者が作成した遺言については、
作成時の遺言能力があったのかどうかという点で争うこともあります。

京都の有名なかばん屋、一澤帆布が先代の自筆証書遺言の有効性をめぐり
泥沼の争いになって、兄弟と会社がバラバラになってしまったのは
記憶に新しいことかと存じます。

こうしたトラブルは、規模の大小にかかわらず
どこのおうちにも起こりうることです。

公正証書遺言ですと、遺言者本人が公証人に口述して筆記してもらい
立会人が2人もいることから、遺言の有効性は保証されてます。

自筆証書遺言を作ろうと考えられている方は
「とりあえず自筆証書遺言でよいか」というのではなく、
将来トラブルが起きないかどうかをよく考えた方が良さそうです。

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遺言があったが逆に揉めてしまうケース③

『不動産の相続登記ができない』

不動産を相続した場合、通常は相続登記をして名義変更を行うのですが、
遺言に記載されている内容だけでは登記ができないケースがあります。
その場合、他の相続人の協力が必要になるケースがあります。

本来、遺言というのは、相続人間で揉めないように作るものですから
相続後に他の相続人の協力を受けるような事態はできるだけ避けるべきです。

実際にあったケースですが、
一筆の田の一部に土を入れて青空駐車場にされている方が
遺言書の中で駐車場部分を妻に
それ以外の部分を長男に
という様に遺言されている方がいました。
(それも公正証書で!)

公証人は、おそらく固定資産税の納付書をみて
田部分と雑種地部分が分かれているので
納付書に従って上記のような遺言を作られたかと思いますし、
勿論遺言としては有効です。

但し、名義変更できるかといえば、すぐにはできません。
まず、田部分と雑種地部分に分筆しなければなりません。
その際に相続人全員の協力が必要になります。

この場合に、土地をもらえなかったことを不満に思っている相続人がいれば
すぐに協力してもらえるでしょうか?

このケースの場合には、配偶者と長男が土地の相続人でしたので
共有で相続するように文言を修正し、
配偶者にも遺言書を作ってもらうことにしました。

母子の共有でしたら、相続により将来的に共有解消できますが
兄弟で共有にして、共有物分割するのは、将来に問題を残す形になりますので、
できれば生前中に分筆を行い、枝番ごとに遺言で相続人を指定する方が無難です。

他にも不動産の相続登記ができないケースとして、例えば

・地番でなく住居表示になっている。(住居表示だと物件の特定ができないケースがある)
・通称で書いてある。(田畑に多い)
・筆界ごとに指定していない。(上の例のケースの他、測量図に朱書きなどで指定してるケース)

などを目にしたことがあります。特に自筆証書遺言に多いです。

また逆に、土地だけ記載していて建物の記載が無い場合には
(未登記建物がある場合で固定資産税が課税されていないような場合によく見かけます)
遺言があったが逆に揉めてしまうケース②
になります。
この場合、「土地の上に存する建物・構築物一切」というような感じで
包括的に記載することが一般的です。

きちんと遺言だけで相続登記ができるようにして、
相続したけど登記ができないというトラブルが無いように
不動産の記載には注意が必要です。

カテゴリ:
遺言があったが逆に揉めてしまうケース②

『遺言に記載されていない財産がある場合』

遺言があっても全ての遺産が網羅されていない場合、
遺言に記載されていない財産はどうなるのでしょうか?

その記載されていない財産について、
相続人全員で遺産分割協議をすることになります。

良く見かけるケースとしては、
遺言で不動産を跡継ぎの長男などに相続させると記載されてるのですが
その他の財産には全く言及していないケース。
この場合、その他の財産について遺産分割することになるのですが、
全遺産の法定相続分以上に長男が土地を相続する場合に
金融資産などは相続できなくなり、納税ができないということも考えられます。

遺言の内容が特定の相続人に偏っている場合には、
遺産分割がスムーズにいかず、せっかく遺言があったのに揉めることが良くあります。

では、どうやって財産をもれなく書くのかといいますと、
「特定できないものについてはできるだけ包括的に書く」
ということなんです。

例えば文例として

○○銀行にて契約中の預金・信託等の金銭債権及び株式・債券等の有価証券は長男へ
その他の銀行の・・・は二男へ

とか

○○銀行他全金融機関にて契約中の預金・信託等の金銭債権及び株式・債券等の有価証券は
遺言執行者にて解約出金の上、長男と次男にそれぞれ2分の1ずつ相続させる

とか

第●条から第●条に記載した以外の一切の財産を■■に相続させる。

とか、いろいろと工夫を凝らして、
遺言記載漏れ財産が無いように書くのがポイントです。

また、例えば「妻に○○を相続させる」と遺言に記載したが、
配偶者が先死亡するケースも考えられます。
この場合、特に記載が無ければ○○という財産については
遺言書に記載が無いのと同じことになります。

この場合、「妻が先に死亡した場合には○○は代襲相続させる」とか
「妻が先に死亡した場合には○○は長男に相続させる」とかといった
予備的遺言をしておけば対処できることになります。

もっとも妻が先死亡した際に、遺言書の修正を行えば大丈夫なんですが、
その際夫が既に認知症を発症していて、遺言能力が無いということも
十分に考えられますので、遺言作成時に気を付けておくに越したことが無いです。

実際の遺言作成業務においては、
最初から具体的な遺言案を持ってらっしゃるケースは稀ですので
お客様の希望を聞きながら、将来の変化をある程度予想して、
結果希望に沿うような文案を練り上げていくことになります。

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遺言があったが逆に揉めてしまうケース①

『遺言執行者が記載されていない場合』

遺言があったが逆に揉めてしまうケースとして、
何回かにわたってシリーズで紹介したいと思います。

第1回目は遺言執行者についてです。

「遺言執行者」といいますと、なかなか聞きなれない言葉ですが、簡単に言うと

遺言書に書かれたとおりに手続きを進めていく人

のことです。

この遺言執行者を遺言の中で指定しておくことができます。
遺言執行者は、誰でもなれます。
例えば、相続人の中で信頼できる人を選んでおくとか、
遺言作成手続きをお願いした、信託銀行や弁護士・税理士などを選ぶこともできます。

この遺言執行者が決まっていない場合に、
手続きを進める上でトラブルが生じるケースがあります。

例えば法定相続人で無い人に財産を「遺贈」する場合などは
財産の名義変更について遺言執行者がいれば遺言執行者の実印と印鑑証明だけで手続きができますが、
遺言執行者がいない場合には相続人全員の実印と印鑑証明が必要になってしまいます。

また預貯金の解約出金についても、
通常金融機関は公正証書遺言で遺言執行者を決めている場合に限り、
遺言執行者の実印と印鑑証明だけで解約出金に同意してくれます。
つまり自筆の場合や遺言執行者が決まってない場合には例え遺言があっても
相続人全員の実印・印鑑証明が無いと
解約出金できないということになってしまいます。

遺言書の中で遺言執行者が定められていない場合に、
相続人全員の協力が得られる場合には問題ないのですが、
そうでない場合には、遺言執行者を家庭裁判所に申し立てて
選んでもらわなければなりません。

また遺言執行者を選ぶ場合にも、自分と同年代の者を選ぶのは要注意です。
相続発生する前に、その執行者は先死亡している場合には
結果、遺言執行者がいない遺言になりますし、
生存していたとしても、万が一認知症を発症しているようなケースの場合には
遺言執行できなくなります。

せっかく作る遺言ですので、遺言執行者をきちんと指定して、
執行の際にトラブルを生じないようにしましょう。

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