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今年、大注目の税務訴訟として武富士の贈与税訴訟があります。
この訴訟、どちらが勝っても、結構大変なことになります。
国が勝った場合には、租税法律主義の根幹が揺らぎますし
納税者側が買った場合には百数十億の還付加算金が国庫から支払われます。

争点となっているのは、「住所の判定」

平成11年に、武富士の元会長夫妻から、長男に贈与されたオランダの投資会社の株式に
対する課税取り消しを求めた訴訟です。
従前の贈与税では、海外財産を海外在住の人に贈与した場合には
贈与税がかかりませんでした。

これが平成12年から改正になり、贈与した者と贈与を受けた者のどちらかが
5年以内に日本に住所をもっていた場合には、原則課税対象になるようになりました。
そこで武富士の会長が改正前に、駆け込みで海外財産を贈与したところ、
長男の実質の住所は日本にあるとして、追徴課税がされました。
延滞税を含めた長男の納税額が1585億円。

第一審では、長男が勝ちましたが、(個人としては最高額の追徴課税取消額)
高裁で逆転敗訴。

高裁の裁判官は、
当時、長男は実際に一年の2/3を香港で過ごしていた(過去3年にわたって)にも関わらず
「税回避を目的として滞在日数を調整していた」と認定。
香港の居住施設が長期滞在用でなく、日本の自宅に家財道具を置いていたから
生活の本拠地=住所は日本だった→課税は適法だという判決です。

でも普通に考えて、
節税とか、租税回避行為とか抜きにして
住所がどこにあるのかって、1年の大半をどこで暮らしているかってことだと
思うんですが、いかがでしょうか?
住所移したいけど、租税回避って言われたらどうしよう?
なんてことになれば、居住の自由の侵害です。
そもそも、税法では、租税回避行為の場合には住所の判定をどうするといった
規定はどこにも書いてありません。

さて、租税法律主義という、大原則をご存知でしょうか。

租税法律主義とは、何人も法律の根拠がなければ、租税を賦課されたり、
徴収されたりすることがないとする考え方のことです。

日本国憲法の84条に
あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、
法律又は法律の定める条件によることを必要とする。

とも規定されている民主主義の大原則です。

一般的にいって、「武富士」=「サラ金」=「けしからん」であり、
途方もない財産を持っている一族で「けしからん」ということであり、
テレ朝の報道ステーションの古舘さんなんかにしてみたら
「一般庶民が派遣切りにあって、大変なこのご時世に・・・」
と眉をしかめるところかもしれませんが、

そんな、感情的なお話は置いておいて

根拠なく「けしからん」だけで、税金を課税されても良いのかといった、
非常に深い、民主主義の根源に関わる問題です。

最高裁の判決は2/18日です。