亡父の預金取引経過の開示を求めたい
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同居親族など被相続人の財産を生前管理していた人による、
被相続人財産の取り込みです。
ただ取り込みといっても、実際には疑心暗鬼であることも多く
実際には疑念が疑念を生んでいるケースもありますが・・・
被相続人の遺産調査を行う場合には
生前の預金の入出金の確認が欠かせません。
相続税の申告を伴う場合には、
通常5~10年分の預金取引を確認し、
財産の流出や流入について
問題が無いかどうかを確認します。
しかし、相続人が敵対している場合、
財産管理していた相手方が、
被相続人の通帳を持っていて開示してくれないときに、
金融機関に対し、取引履歴の開示を求めることができるのでしょうか?
以前は、金融機関により対応がまちまちであり、
「相続人全員の同意が無いと開示できません」という回答をする
金融機関もありましたが、
平成21年1月に最高裁判例が判例を出しました。
預金取引記録開示請求事件 平成21年01月22日 最高裁判所第一小法廷
この最高裁判例によりますと
預金者が死亡した場合、金融機関は預金契約に基づき
共同相続人のうち一人の請求であっても
その請求が権利の乱用に当たらない限り
取引経過を開示すべきである
としました。
もし金融機関に開示を拒否された場合には
この判例を根拠として開示を求めることができるかと思います。
但し、取引履歴の開示には、思いのほか費用がかかります。
10年分を何口座も取り寄せたらウン十万円の費用を請求されることもあります。
費用の計算の仕方は金融機関すべて横並びではなくそれぞれに違うようです。
地銀や信金などでは無料で出してもらえるところもあります。
ただ実際に被相続人の預金流出が認められたとしても
相手方の口座へ入金されたかどうかは確認することができないですので
結果的に遺産確認や不当利得をめぐって裁判で争うことが多いです。
相続税がかかり、租税回避性が高い場合には
いろいろと税務署に情報提供して、税務調査に入ってもらい
遺産の取り込みを立証してもらうという手段もあります。
相続税が相続人全員にかかる税金であるからこそ使える方法ですね。
勿論追徴税が発生しますが、それ以上に遺産分割による取り分も増えますので
税務調査がウェルカムなこともあるという稀有な例です。
(税務署は嫌がりますが…、適正納税のためにしっかりと働いてもらうのです。)