名義預金の贈与の場面
以下、『世界の中心で、愛をさけぶ』から引用--------------------------------------------------------------
祖父はしばらく思案げにぼくの顔を見ていた。やがて立ち上がり、隣の部屋から郵便局の通帳を持ってきて、テーブルの上に置いた。
「暗証番号はクリスマス・イブだ」
「ぼくの誕生日?」
「本当は大学に入ってから渡そうと思っていた。しかし物事には潮時というものがある。朔太郎が何をしようとしているか、わしは知らん。言いたくないというのなら、それでもかまわん。ただ一つだけ訊いておくが、それはどうしてもいまやらないと後悔することなんだな」
ぼくは黙って頷いた。
「そうか、わかった」祖父はきっぱりと言った。「それじゃあ持っていきなさい。百万くらいはあるはずだ」
「いいの?」
「良識ある行動を心がけるんだぞ」と祖父は言った。「朔太郎一人のことじゃないんだからな」
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白血病になってしまった恋人アキをつれてオーストラリアへ行こうとする主人公が
旅費をどうするかで困り、おじいちゃんにに相談に行くシーン。
税務的なことを言うと、
おじいちゃんが作ってくれていた朔太郎名義の郵便貯金がいわゆる「名義預金」
通帳を手渡しして、暗証番号を教えたこのシーンが、「贈与」の瞬間です。
朔太郎の年間受贈金額が110万円以下であれば、贈与税の申告義務はありません。
なんてね。
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