遺言があったが逆に揉めてしまうケース③

『不動産の相続登記ができない』

不動産を相続した場合、通常は相続登記をして名義変更を行うのですが、
遺言に記載されている内容だけでは登記ができないケースがあります。
その場合、他の相続人の協力が必要になるケースがあります。

本来、遺言というのは、相続人間で揉めないように作るものですから
相続後に他の相続人の協力を受けるような事態はできるだけ避けるべきです。

実際にあったケースですが、
一筆の田の一部に土を入れて青空駐車場にされている方が
遺言書の中で駐車場部分を妻に
それ以外の部分を長男に
という様に遺言されている方がいました。
(それも公正証書で!)

公証人は、おそらく固定資産税の納付書をみて
田部分と雑種地部分が分かれているので
納付書に従って上記のような遺言を作られたかと思いますし、
勿論遺言としては有効です。

但し、名義変更できるかといえば、すぐにはできません。
まず、田部分と雑種地部分に分筆しなければなりません。
その際に相続人全員の協力が必要になります。

この場合に、土地をもらえなかったことを不満に思っている相続人がいれば
すぐに協力してもらえるでしょうか?

このケースの場合には、配偶者と長男が土地の相続人でしたので
共有で相続するように文言を修正し、
配偶者にも遺言書を作ってもらうことにしました。

母子の共有でしたら、相続により将来的に共有解消できますが
兄弟で共有にして、共有物分割するのは、将来に問題を残す形になりますので、
できれば生前中に分筆を行い、枝番ごとに遺言で相続人を指定する方が無難です。

他にも不動産の相続登記ができないケースとして、例えば

・地番でなく住居表示になっている。(住居表示だと物件の特定ができないケースがある)
・通称で書いてある。(田畑に多い)
・筆界ごとに指定していない。(上の例のケースの他、測量図に朱書きなどで指定してるケース)

などを目にしたことがあります。特に自筆証書遺言に多いです。

また逆に、土地だけ記載していて建物の記載が無い場合には
(未登記建物がある場合で固定資産税が課税されていないような場合によく見かけます)
遺言があったが逆に揉めてしまうケース②
になります。
この場合、「土地の上に存する建物・構築物一切」というような感じで
包括的に記載することが一般的です。

きちんと遺言だけで相続登記ができるようにして、
相続したけど登記ができないというトラブルが無いように
不動産の記載には注意が必要です。