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遺言があったが逆に揉めてしまうケース②

『遺言に記載されていない財産がある場合』

遺言があっても全ての遺産が網羅されていない場合、
遺言に記載されていない財産はどうなるのでしょうか?

その記載されていない財産について、
相続人全員で遺産分割協議をすることになります。

良く見かけるケースとしては、
遺言で不動産を跡継ぎの長男などに相続させると記載されてるのですが
その他の財産には全く言及していないケース。
この場合、その他の財産について遺産分割することになるのですが、
全遺産の法定相続分以上に長男が土地を相続する場合に
金融資産などは相続できなくなり、納税ができないということも考えられます。

遺言の内容が特定の相続人に偏っている場合には、
遺産分割がスムーズにいかず、せっかく遺言があったのに揉めることが良くあります。

では、どうやって財産をもれなく書くのかといいますと、
「特定できないものについてはできるだけ包括的に書く」
ということなんです。

例えば文例として

○○銀行にて契約中の預金・信託等の金銭債権及び株式・債券等の有価証券は長男へ
その他の銀行の・・・は二男へ

とか

○○銀行他全金融機関にて契約中の預金・信託等の金銭債権及び株式・債券等の有価証券は
遺言執行者にて解約出金の上、長男と次男にそれぞれ2分の1ずつ相続させる

とか

第●条から第●条に記載した以外の一切の財産を■■に相続させる。

とか、いろいろと工夫を凝らして、
遺言記載漏れ財産が無いように書くのがポイントです。

また、例えば「妻に○○を相続させる」と遺言に記載したが、
配偶者が先死亡するケースも考えられます。
この場合、特に記載が無ければ○○という財産については
遺言書に記載が無いのと同じことになります。

この場合、「妻が先に死亡した場合には○○は代襲相続させる」とか
「妻が先に死亡した場合には○○は長男に相続させる」とかといった
予備的遺言をしておけば対処できることになります。

もっとも妻が先死亡した際に、遺言書の修正を行えば大丈夫なんですが、
その際夫が既に認知症を発症していて、遺言能力が無いということも
十分に考えられますので、遺言作成時に気を付けておくに越したことが無いです。

実際の遺言作成業務においては、
最初から具体的な遺言案を持ってらっしゃるケースは稀ですので
お客様の希望を聞きながら、将来の変化をある程度予想して、
結果希望に沿うような文案を練り上げていくことになります。

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遺言があったが逆に揉めてしまうケース①

『遺言執行者が記載されていない場合』

遺言があったが逆に揉めてしまうケースとして、
何回かにわたってシリーズで紹介したいと思います。

第1回目は遺言執行者についてです。

「遺言執行者」といいますと、なかなか聞きなれない言葉ですが、簡単に言うと

遺言書に書かれたとおりに手続きを進めていく人

のことです。

この遺言執行者を遺言の中で指定しておくことができます。
遺言執行者は、誰でもなれます。
例えば、相続人の中で信頼できる人を選んでおくとか、
遺言作成手続きをお願いした、信託銀行や弁護士・税理士などを選ぶこともできます。

この遺言執行者が決まっていない場合に、
手続きを進める上でトラブルが生じるケースがあります。

例えば法定相続人で無い人に財産を「遺贈」する場合などは
財産の名義変更について遺言執行者がいれば遺言執行者の実印と印鑑証明だけで手続きができますが、
遺言執行者がいない場合には相続人全員の実印と印鑑証明が必要になってしまいます。

また預貯金の解約出金についても、
通常金融機関は公正証書遺言で遺言執行者を決めている場合に限り、
遺言執行者の実印と印鑑証明だけで解約出金に同意してくれます。
つまり自筆の場合や遺言執行者が決まってない場合には例え遺言があっても
相続人全員の実印・印鑑証明が無いと
解約出金できないということになってしまいます。

遺言書の中で遺言執行者が定められていない場合に、
相続人全員の協力が得られる場合には問題ないのですが、
そうでない場合には、遺言執行者を家庭裁判所に申し立てて
選んでもらわなければなりません。

また遺言執行者を選ぶ場合にも、自分と同年代の者を選ぶのは要注意です。
相続発生する前に、その執行者は先死亡している場合には
結果、遺言執行者がいない遺言になりますし、
生存していたとしても、万が一認知症を発症しているようなケースの場合には
遺言執行できなくなります。

せっかく作る遺言ですので、遺言執行者をきちんと指定して、
執行の際にトラブルを生じないようにしましょう。

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日本には、いわゆるタンス預金といわれるものが推計30兆円あると
試算されていますが、相続手続きでみなさん頭を悩ませてらっしゃるのが
このタンス預金の取り扱いだったりします。
そして税務署の税務調査もタンス預金に対しては
かなり神経質になってきています。

ただ納税者からしてみたら
「現金に名前は書いてないのだから、税務署にばれないのじゃない」
っと言うのが本音ではないでしょうか。

確かに少額で、コツコツと貯めたようなタンス預金の場合には
税務署が捕捉することは難しいかと思われますが
(勿論、だからと言って申告しなくても良いといってるわけではありませんよ)
ある程度まとまった金額の場合には注意が必要です。

税務署がタンス預金を疑うのは、次のようなケースの場合です。

① 被相続人の過去の収支から推測される貯まりから見て、実際の金融資産が少ない

   →過去の収支のデータは確定申告書やさまざまな資料でで税務署は把握しています。

② 被相続人の過去の預金の入出金から見て、行方不明の出金が多い
  
   →税務調査の際には、税務署は被相続人の入出金履歴を
    過去5年~10年取り寄せて不明点が無いかチェックしてきます。

③ 相続人や親族の過去の預金に不明な入金がある。

   →被相続人だけでなく相続人・親族の預金についても調査が及びます。
    過去にタンス預金から支出していると、常時タンス預金としてストックする傾向があると見られます。

④ 相続人・親族が近年家を建てたり事業を立ち上げた際に、出所不明な資金提供がある。

   →これも③と同じ

⑤ 相続後の相続人・親族の預金口座に、相続した財産以外の入金がある、
  あるいは相続税や相続に係る費用の支払いの出金が現金で行われている。

   →相続後の入出金についても税務署は目を光らせています。

そのほか、大量の旧札を新札に交換した情報なども、
税務署は定期的に入手しているとのことです。

今後政府が検討している納税者番号制度が導入されれば、
ますます個人金融資産の捕捉率は高まっていくものと思われます。

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