ついに相続税の基礎控除が引き下げになるようです。
本日の日経朝刊1面に記事が出てました。

現行の相続税の基礎控除額は
固定額…5,000万円
相続人一人…1,000万円
となってますが、この固定額分を3,000万円に引き下げるという旨の
記事になっておりました。

この基礎控除額ですが、以前から高すぎるので
改正すべきだとする議論がありました。

過去の相続税の基礎控除額の変遷を見ていくと
     固定額  相続人一人当り
  1973年 600万   120万
  1975年 2000万  400万
  1988年 4000万  800万
  1992年 4800万  950万
  1994年 5000万  1000万
という様に、日本の経済成長とともに増額されていたことが
見て取れます。

基礎控除が現在の金額になったのは、バブルの絶頂時
そこから全国の地価は1/3以下になっているのに
基礎控除額はバブル時のまま。
相続税の申告率はわずか4.2%
厳しい国の財政状態

となれば、当然いつ改正されておかしくない状態でしたので
相談うけて試算するような場合には、
その旨、注意を促すようにしていましたが、
今までに基礎控除を意識して相続対策されていた方は
今後見直しが必要でしょうね。

今後の改正情報には要注目です。

遺産分割でもめる原因の一つが、
同居親族など被相続人の財産を生前管理していた人による、
被相続人財産の取り込みです。

ただ取り込みといっても、実際には疑心暗鬼であることも多く
実際には疑念が疑念を生んでいるケースもありますが・・・

被相続人の遺産調査を行う場合には
生前の預金の入出金の確認が欠かせません。

相続税の申告を伴う場合には、
通常5~10年分の預金取引を確認し、
財産の流出や流入について
問題が無いかどうかを確認します。

しかし、相続人が敵対している場合、
財産管理していた相手方が、
被相続人の通帳を持っていて開示してくれないときに、
金融機関に対し、取引履歴の開示を求めることができるのでしょうか?

以前は、金融機関により対応がまちまちであり、
「相続人全員の同意が無いと開示できません」という回答をする
金融機関もありましたが、
平成21年1月に最高裁判例が判例を出しました。
預金取引記録開示請求事件 平成21年01月22日 最高裁判所第一小法廷

この最高裁判例によりますと
預金者が死亡した場合、金融機関は預金契約に基づき
共同相続人のうち一人の請求であっても
その請求が権利の乱用に当たらない限り
取引経過を開示すべきである
としました。

もし金融機関に開示を拒否された場合には
この判例を根拠として開示を求めることができるかと思います。

但し、取引履歴の開示には、思いのほか費用がかかります。
10年分を何口座も取り寄せたらウン十万円の費用を請求されることもあります。
費用の計算の仕方は金融機関すべて横並びではなくそれぞれに違うようです。
地銀や信金などでは無料で出してもらえるところもあります。

ただ実際に被相続人の預金流出が認められたとしても
相手方の口座へ入金されたかどうかは確認することができないですので
結果的に遺産確認や不当利得をめぐって裁判で争うことが多いです。

相続税がかかり、租税回避性が高い場合には
いろいろと税務署に情報提供して、税務調査に入ってもらい
遺産の取り込みを立証してもらうという手段もあります。
相続税が相続人全員にかかる税金であるからこそ使える方法ですね。

勿論追徴税が発生しますが、それ以上に遺産分割による取り分も増えますので
税務調査がウェルカムなこともあるという稀有な例です。
(税務署は嫌がりますが…、適正納税のためにしっかりと働いてもらうのです。)

10/24の日経新聞に政府税調の検討事項の記事が
一面に出てました。

見出しは
孫への贈与、税優遇拡大
政府税調検討 相続税は引き上げ
となってました。

記事の内容としては、

現行親から子に限定されている
精算課税贈与を孫にも適用できるようにする

相続税は、基礎控除と税率を見直して増税

死亡保険金や死亡退職金の非課税枠の廃止

ということについて、政府税調が検討に入ったというものでした。

政府からすると、

全体の4.2%しか相続税の納税負担率を
10%以上に引き上げたい。

それでも90%近くが相続税かからないのであれば、
相続起きる前に、お金を使わない年寄りの手元に塩漬けにしておかないで
お金のかかる世代に移転してじゃんじゃん使ってもらうことにより需要を喚起したい。

「お金持ちにかかる税金という」イメージの強い相続税を増税することにより
「庶民にかかる税金」というイメージがある消費税の増税議論をする上での
ガス抜きにしたい

という思惑が見え隠れする改正内容です。

いずれにしても相続税については、将来的に増税ということが
既定路線のようですので、基礎控除意識した相続税試算については
税制改革の内容が見えてくるまでは保留にしておいた方が良さそうです。

死亡保険金と死亡退職金の非課税というのは
いわゆる500万円×法定相続人の数という非課税枠のことですが、
節税対策としてかなり普及しているものですので
撤廃となれば、現場では混乱ありそうですね。

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